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どこからともなくいい香りがしてくる。 ジャスミンよりもう少し柔らかな、息の長い感じのかおり。 きょろきょろと見回したら、ツルがにょきにょきと飛び出していた。 定家葛(ていかかずら)だ。夏の暑さを超えて葉は力強い濃い緑色をした厚手のものになっていた。 春先にみかけたときは、若葉と薄黄色の花芯とはなびらがゆらゆらとしていたのに、夏の終わりに見 るとずいぶんと強くお日様をもとめて上へ上へへと伸びている。 藤原定家は式子内親王への想いが彼女の死後も断ち切れずいた。そしてそんな定家の想いが葛となっ て内親王のお墓にからみついていた、といった由来で名付けられている。 私はてっきり内親王の想いが葛となって、定家の墓にからみついていたのだと思い込んでいたらその 逆だった。オトコの想いが葛になって絡み付くというのは、女の想いよりもっときりきりと強く絡み 付いていそうで、これはちょっと怖い。 想いが葛となってからみつくほどの愛を持っているヒトはたくさんいるだろう。でも大抵のヒトはき りきりと絡み付くことなく、その想いをうまくそらしていくのだろうね。 自分の気持ちに嘘をつく必要はないだろうけれど、真っ正直にぶつけすぎるのも考えもの、そんなこ とをこの葛は伝えたかったのだろうか。 それにしても香りは柔らかく、そんな強い執着が込められている花とは思えないけれど、やはり日本 の花にしてはかなり香りがきついからそんな風な言い伝えになったのかもしれないね。 電車の中での香りは控えめに。 ふと そんなことをこの由来と香りから思った。 |
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